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読書・書籍

2018.09.28

第80回『澤野工房物語』(著:澤野由明)

眼と耳で楽しむ読書術

大阪・浪速、昭和の香り漂う下町として人気の新世界。

通天閣のお膝元、「ソース二度づけお断り」の串カツでも有名なこの町に、
"さわの履物店"という下駄屋があります。
創業100年を超える老舗で、今では浪速区唯一の下駄屋。
近所の方はもちろん、外国人観光客、さらには京都や岸和田からも
お客が訪れる名物店です。

その四代目店主の澤野由明さんは、実は下駄屋に加えて、もう1つ、
いわゆる"二足のワラジ"を履いていることで知られる名物人。

それは一体何かというと、
「ジャズレーベル」、
その名も、澤野工房!

音楽不況でCD店が続々と消えていく中、
ジャズという極めてニッチな舞台で、
澤野工房はその名を世界に轟かせています!

日本を代表するジャズピアニスト・山中千尋さんも
この澤野工房からデビューしました。

今回紹介するのは、そんな澤野工房の波乱万丈の道のりを描いた

『澤野工房物語』(著:澤野由明)

です。

澤野工房物語 下駄屋が始めたジャズ・レーベル、大阪・新世界から世界へ/amazonへ

下駄もジャズも、どちらも流行っているものではない、
それどころか、衰退していく渦中にあるもの、
といっても過言ではない中、なぜ長く続けてこられるのか?

澤野工房のビジネスモデルとして
3つの"ない"が挙げられます。
1. ストリーミングやダウンロードをやらない
2. ベスト盤やコンピレーション盤を商品化しない
3. 広告を出さない

一般的な大手とは正反対のビジネスモデルですよね。
特に1と2は、利益を考えたら外せないところですけど、
澤野工房は違います。

ストリーミングやダウンロードをやらない理由は、
「形のないものには愛情を注げないから」
とのこと。
もともと大のジャズ好きでコレクターだった澤野さんとしては
絶対に譲れないところだ、と。
今や、世のほとんど全てのレーベルがストリーミング配信している中、
フィジカルメディアにこだわる姿勢を貫いています。

次に、ベスト盤やコンピレーション盤を商品化しない理由は、
「ジャズはアルバム単位で聴いてほしいから」
とのこと。
正直、ベスト盤は売れ筋ですし、手っ取り早くセールスが見込めますので、
世界中で増える一方ですし、近年は乱発も目に付きます。
そんな中、澤野工房の姿勢は異色であり、
ファンからの信頼にもつながっていると確信します。

本書を読んでいて感じるのは、澤野さんは澤野工房の社長ですけど、
それ以上に、一人のジャズファンであるということです。
だから、ジャズファンを裏切らない。
ジャズファンが喜ぶアルバムをつくる。

「いろんなことが便利になった現代、こんなことを言うと笑われるかもしれませんが、
 仕事で楽をすると必ず振り出しに戻ります。省ける手間はもちろん省いた方がいい。
 でも今は省いたらダメな手間まで省いてしまう商売をよく見かけます」

「回り道こそ一番の近道」

と澤野さん。

本書は澤野さんのジャズ愛と、長きに渡る下駄屋とジャズとの二足のワラジから得た
商売哲学にあふれています。
こんな本は他にありません。

音楽ファンはもちろん、経営者やリーダーにとっては、
実によきヒントや学び、刺激になる一冊。
メモしたくなることが、いっぱいです。
さっそく読んでみてください!

尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『WHITE NIGHTS』 (演奏:ウラジミール・シャフラノフ・トリオ)

です。

WHITE NIGHTS/amazonへ

存続危機に立った澤野工房が、息を吹き返すキッカケになるとともに、
シャフラノフの日本での人気を決定づけた名盤。
合せてお楽しみいただければ幸いです。

では、また次回。

 

講師紹介

団 長(本のソムリエ)

ビジネス書から絵本まで、年間1000冊以上を読破する“本のソムリエ”。活字離れが加速化する現代、独特の読み聞かせを始めとするユニークな授業を通じて、読書と親しむキッカケづくりや日本語教育に情熱を注いでおり、小中学校をはじめとする教育機関からの、読書授業の依頼が殺到。シブヤ駅前読書大学...>もっと見る

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