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経済・株式・資産

2018.09.26

第111話 世界初の自動運転都市を目指す「雄安新区」

中国経済の最新動向

筆者は河北省「雄安新区」を追跡調査するため、今年8月中旬に再び同新区を訪れた。前回訪問したのは昨年7月末だが、1年経った現在、雄安新区にはどんな進展があっただろうか? このレポートは最新の動きを伝える。

◆環境配慮型都市の実現を急ぐ
 習近平主席肝煎りの雄安新区は北京の南西100キロ強の河北省境内にある。北京南駅から高速鉄道の列車に乗って約1時間で到着する。

私は最寄駅の「白洋淀駅」からタクシーで今回の視察先である雄安新区市民センターに向かった。しかし、タクシーや外来車は直接に市民センターエリアに入れず、エリア外の駐車場で下車しなければならなかった。そこで市民センター見学専用の無料送迎バスに乗り換える。

送迎バスは中国の国産自動車大手BYD製の電気自動車(EV)で、15分間隔で発車する(下の写真を参照)。市民センター関係者の説明によれば、環境保全のため、面積10万平方メートルにのぼる市民センターエリア内で走っている車は、すべて二酸化炭素(CO2)を出さない電気自動車だ。ガソリン車の走行は禁止される。見学者送迎用のシャトルバスも職員のエリア内移動手段もすべて電気自動車だ。

写真説明)見学者送迎用のBYD製EVバスが並んでいる乗り場。沈才彬撮影。

写真説明) 面積10万平方メートルに上る雄安新区市民センター。沈才彬が撮影。

 市民センターに到着すると、環境配慮型低層ビルや綺麗な道の姿が目に入る(上の写真を参照)。昨年、私が初めて雄安新区を訪れた時、役所の雄安新区管理委員会は地元のホテル一角を借りて事務所としていたが、今は市民センター内のオフィスビルに引っ越した。新区管理委員会ビルももちろん低層ビルである(下の写真を参照)。

写真説明) 河北省雄安新区管理委員会を訪れた筆者

 新区関係者の説明によれば、雄安新区は従来の都市開発と違い、環境配慮型モデル都市を目指している。新区計画の立案者の1人で、元上海市長の徐匡迪氏は「道路や鉄道などの大部分の交通インフラは地下に構築する」と語っている。現在、雄安新区では環境汚染の企業が操業停止や移転を急ぎ、地元の住民たちも植林や道路整備など環境保護関連の仕事をしている。

◆世界初の自動運転新都市を目指す
雄安新区はいま注力しているもう1つの分野は、AI(人口知能)を駆使する自動運転の新都市構築である。

鉄道など大部分の交通インフラは地下で建設する一方、地上道路ではEVバスなど公共交通を中心に据え、個人用車をすべて自動運転車で補完的役割を担う、という新区の青写真が描かれている。

雄安新区面積2,000万平方キロのほとんどは未開発の農村地域である。フロンティア地帯に自動運転車を前提に設計する新しい都市は、大都市が抱える非自動運転車や歩行者が入りまじる既存インフラとの調和という難題に直面しない。新区の青写真通りに開発が進めば、2035年時点で、200万人口を有する雄安新区は個人の乗用車をすべて自動運転にする世界初の自動運転新都市となる。

この目標を実現するために、中国のIT企業大手・バイドゥ(百度)は、雄安新区と協力し、市民センターエリア内で自動運転車の走行試験を加速している。私は訪問した日に、バイドゥの自動運転車に出会った(下の写真を参照)。その性能を確かめるために、2回にわたって走行中の自動運転車の前に立ち阻んだが、車はすぐ立ち止まった。ただし、自動運転車のスピードが遅いので、猛スピードの時に止まれるかどうかがわからない。言い換えれば、自動運転車の安全性の課題がまだ残っている。

写真説明)走行試験を続けるバイドゥの自動運転車。沈才彬が撮影。

写真説明)市民センターエリアにオープンした京東の「無人コンビニ」。沈才彬が撮影。

 AIを駆使する自動運転車のほか、市民センターエリアに中国電子商取引大手・京東の「無人コンビニ」もオープンした(上の写真を参照)。私もスマホで関連アブリをダウンロードし、「無人コンビニ」での買い物を楽しみに体験した。このほか、市民センターには顔識別のホテルも誕生した。

AIやITなど先端技術を駆使する「スマートシティー」の構築に向けて、雄安新区は今、着実に前進している。  (了)

講師紹介

沈 才彬(多摩大学 教授)

1944年中国江蘇省海門市生まれ。中国社会科学院大学院修了。同大学院準教授、東京大学、早稲田大学、御茶ノ水女子大学、一橋大学などの客員研究員を歴任。三井物産戦略研究所主任研究員、同中国経済センター長などを経て、08年4月より、多摩大学経営情報学部教授、および、同大学院経営情報学研究科教...>もっと見る

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