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健康・メンタルヘルス

2018.09.25

第6回 白骨温泉(長野県)ミルク色の「濁り湯」はもともと透明だった!?

これぞ!"本物の温泉"

 ■温泉情緒をかきたてる乳白色の湯
 「濁り湯じゃないと温泉に入った気がしない」。先日、知人と温泉の話をしていたときに、飛び出したセリフだ。たしかに、乳白色や赤茶色、青色、緑色に濁った湯を見ると、温泉情緒をかきたてられる。「はるばる温泉に来てよかったなあ」と感じる瞬間である

※イメージ写真です

※イメージ写真です

 濁り湯は見た目のインパクトが強いが、温泉成分が濃いケースも多い。温泉の中に含まれる成分が空気などに触れることによって化学反応が起き、色がつくのである。ということは、ほとんどの温泉は、湧き出した直後は透明である。時間が経つほどに濁りは深まっていくのだ(例外として、モール泉のように最初から色のついている湯もある)。

 そのことがよくわかる温泉が、長野県・北アルプスの南端、乗鞍岳の標高1400メートルの渓谷に湧く。「白骨温泉」は、開湯が鎌倉時代までさかのぼるという古湯で、江戸の元禄年間に湯治場として本格的に宿が建ちはじめた。現在では、十数軒の宿が温泉街を形成している。

 ■湯の美しさが温泉史に残る事件を引き起こした
 白骨温泉といえば、その名の由来となった乳白色の白濁湯が人気である。その色の美しさから、テレビや雑誌に頻繁に取り上げられ、温泉ファンの支持を集める温泉地となった。

 一方で、その湯の美しさが大事件を引き起こしたこともある。2004年、「白骨温泉公共野天風呂」に端を発した温泉偽装問題では、白骨温泉の象徴である白濁の湯を演出するために、共同浴場の野天風呂や温泉宿の一部が、草津温泉を原料にした入浴剤を投入していたことがあきらかになった。

 成分の変化によって温泉が白く濁らなくなったため、「このままでは入浴客にがっかりされてしまう」と思い込んでしまったのだろう。

 しかし、「透明湯より濁り湯のほうが価値がある」とは言いきれない。実際、透明な湯が酸化した結果が、濁り湯である。入浴感を大きく左右する「鮮度」という点では、濁りが濃い湯ほど劣る。

 ■濁る前の透明湯は新鮮な証拠
 白骨温泉の老舗旅館「泡の湯」は、70坪ほどの広さがある混浴露天風呂が人気だ。3本の打たせ湯が豪快に流れ落ちる湯船は、100%源泉かけ流し。白濁の温泉は硫黄の成分が強く、パンチのきいた湯が多いが、泡の湯はなめらかでやさしい。泉温もぬるめなので、ゆっくり長湯もできる。

 混浴は入りづらいという女性は多いと思うが、「泡の湯」は女性客が多いのが特徴。濁り湯なので、一度浸かってしまえば、人目をあまり気にしなくてすむということと、混浴の入口が女湯の浴室とつながっているため、湯船に入った状態で移動できるということがハードルを下げているようだ。

 そしてなにより、「こんなステキな湯船に入らないのはもったいない」と思わせるだけの魅力があるのだろう。

 混浴露天風呂に浸かったあとは、ぜひ露天風呂に併設された内湯に入ってもらいたい。総木造の2つの湯船には、白濁の湯と透明の湯がそれぞれ満たされている。実は、透明のほうが加温せずに、そのままかけ流しにされた鮮度の高い湯である。

 泡の湯の源泉は、もともと約37℃の透明のぬる湯で、加温されて酸化が進んだ結果、白く濁っているのである。透明の源泉に体を沈めると、たちまち気泡が付着する。新鮮な証拠である。露天風呂の湯よりも、強く温泉の個性を感じられると思う。

 たいていの人は混浴露天の白濁湯に目を奪われ、内湯の新鮮な透明湯をスルーしがちだが、それはあまりにもったいない。「温泉は濁り湯にかぎる」というのは誤った思い込みだと、文字どおり「肌で感じる」はずだ。

講師紹介

高橋一喜(温泉アナリスト)

 千葉県生まれ。上智大学卒業後、2000年ビジネス系出版社に入社し、経営者向けの雑誌やビジネス書の編集に携わる。2008年3月、温泉好きが高じて会社を辞め、「日本一周3000湯の旅」に出発。386日かけて3016湯を踏破。現在はフリーランスとして書籍の編集・ライティングに携わるかたわら、温泉ライター...>もっと見る

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